『店長奮闘記』 ~お客様を選ぶなよー②~
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前回より続く
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なんとか外国のお客様をテーブル席にご案内し席を離れ振り向くと、おしぼりコーナーには人っ子ひとりいない状態。通常はお席へご案内後、すぐにお絞りをお持ちしてファーストオーダーにお伺い出来るようにスタンバイしているのだが…。
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ウチのスタッフたちはまたしても嫌な仕事は店長に押し付けるらしい。一言文句でも言ってやりたいところだが、彼らも知能犯。全員無理やり仕事を見つけて何かをやっているのである。これではさすがの店長も何も言えない…。
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身内からの仕打ちで完全にアウェーになってしまった店長の僕。相変わらず近寄っても来ない我がスタッフたちに苛立ちをおぼえていた僕の頭の中に、突然ビジネス誌で読んだある言葉が浮かんできた。
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「まずはやってみせて、次に言い聞かせて、それからやらせてみる!」彼らが仕事から逃げているのは「出来ない」から。そうなると僕がこの環境をつくっていたという事になる。
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「えーい!自分がやるしかない!」と自分に言い聞かせ、おしぼりとメニューを持ち再び外国のお客様のお席へ。
その姿をカウンター越しから見ていた厨房のケンちゃんが「店長。がんばってね!」と通りすがりにニヤニヤと一言。
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「まあ、見てろよぅ!」という目でケンちゃんに返事をして外国のお客様の前へ立った。
外国のお客様は目をキラキラさせて僕を見ている。僕も自然と笑顔になり「失礼致します。あたたかいおしぼりをお持ちしました。」思いっきり日本語で一人一人に手渡した。英文が思いつかずにとった苦肉の策。
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ただ、ヤケドなどしないようにお客様の目の前で充分に広げて普段より冷ましてから渡した。
外国人のお客様は「サンキュー」とお辞儀をニコニコとしながら、おしぼりを受け取り自然に手を拭いている。
「ラッキー!」
これは何ですか?なんて聞かれたらどうしようかとハラハラものだったが何とか一つクリア。
しかし、まだまだやる事は沢山ある状況。「ウッジュ ライク サムシング ハブ ドリンク?」とお客様の顔を見ながら片言英語を話す。
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そしてそっと手をメニューに向けた瞬間、ある重大な事に気が付いた僕。そう。メニューが日本語だぁ…。
外国のお客様も「読めないんだよねぇ…。」みたいな顔を一瞬した様子だったが、「ドラフト ビアー」と何も見ずにおっしゃってくれたのです。
「ラッキー!」
生ビールはちゃんとありますよ。
ちょっと安心して「ハウ メニー?」なんて聞く僕に、「ワン トゥ スリー」と一人が数えながら教えてくれた。
「スリー OK?」「OK!」なんて会話をしながらちょっとスムーズにいってるじゃん!なんて安心してたら、「ドライマティーニ」
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???
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たじろぐ僕。
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外国のお客様はどうも僕がドライマティーニを理解してないと思ったのかもう一度「ドライマティーニ」と一言。
知ってるんだけど当店にはないんだよなぁ。とりあえず、「ノー ドライマティーニ」と返してみる。
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「xyz xyz xyz xyz xyz xyz xyz」となんだか質問されたみたいだけどよく分からない。
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「ソーリー。ノー ドライマティーニ」と言うのが精いっぱい。ちょっと眉を寄せ困った様子の外国のお客様。
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うー。
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「そういう顔にさせちゃいけないでしょう。」と自分に言い聞かせるが言葉が出てこない。どうしよう…。
なんて思っていたら外国のお客様同士「xyz xyz xyz xyz(それなら仕方ない!)」みたいな感じでオーダーを生ビール4つに変更。
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僕はパントリー(ドリンクをつくる場所)へ戻った。「これ接客としては最悪だなぁ。」となんだか悔しい気分になってきた。
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つづく
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※海外の日本料理店ではドライマティーニが
食前酒になっていることがあるそうです。
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店長奮闘記~登場人物紹介~
谷口店長(24歳)
一応この物語の主人公で郷土料理「旬」の新米店長。猪突猛進で正しいことは正しいと突っ走るところあり。
武田料理長(42歳)
年齢もキャリアも店長よりダブルスコアで上のスーパーシェフ。
いつも店長を大人の目線で支えてくれる男の中の男。
池田キミ子さん(60歳)
店長が最も信頼を寄せ良き相談相手でもあるレジ(フロント)担当。
前職のお寿司屋チェーン店では店長で定年を迎え今はパート。
ケンちゃん(24歳)
店長とは同じ歳の調理スタッフ。お店ではみんなの
ムードメーカーとして調理場とホールの間を取り持つ優しい男。
佐藤くん(21歳)
専門学校を中退してフリーターへ。
とにかく真面目に精神誠意接客する優しい青年だが押しに弱い一面も。
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