店長奮闘記~今年最後の営業日に②~
【前回よりつづく】
ある事がきっかけで、僕はドリンクの棚卸を毎日することにしている。はじめは突然新しい仕事を増やしたわけだから、正直自分の中でも「面倒だなぁ」と思う時も。
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でも、今では毎日やらないほうが怖いくらい良い効果がたくさん。
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やっていることはいたって簡単で、営業前在庫(前日在庫+本日仕入)から本日在庫を引いた数字(棚卸出庫数)をレジから出したPLUの出庫数(レジ出庫数)と突き合わせるというもの。
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はじめの1,2か月は毎日どこかがズレている状態で付き合わせて事実確認をするまでに1,2時間残業当たり前。
ただでも残業が当たり前の飲食店ではこの1,2時間がかなり重い。
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おかげで妻から浮気してるんじゃないかと疑われる羽目に。
でも、ズレの原因は恥ずかしいくらい単純。
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「伝票の付け漏れ」
「お客様へ出し忘れ」
「伝票への2重付け」
「発注されたものが納品されていない」
「発注自体されていない」
「決められた場所に陳列されていない」
などなど色んな問題が次から次へと露呈されていった。
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僕は誰がいけないのかではなくどうすればそれを防げるのかを毎日の朝礼で話し合いみんなの意見の解決策にみんなでチャレンジすることにしました。
ある日の朝礼。「どうも伝票の付け忘れがあるみたいなんだ。どうしたらいいかな?」と聞いてみる。
「ん…。」
みんな顔を見あい牽制しあい口が重い。ヤバイ。朝礼の雰囲気が悪くなってしまった。
「じゃあ、明日までに考えておいて。」と僕が言うとアルバイトたちはみんな一瞬にして安堵の様子。
「おいおいその表情でしゃべってくれよー!」と半分冗談にして和ませそれぞれ持ち場に行かせた。
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「みんな面倒なことは考えてはくれないよなぁ~。」なんて思いながら店内を歩いているとアルバイトの仲良し2人組が営業準備をはじめながら何やら話している。
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沙世ちゃん「ドリンクを出したら、伝票にチェックすればいいんだよ。」
美樹ちゃん「そうだよー。そうすれば伝票の付け忘れも無くなるし、出し間違いも無くなるじゃん。」
そこへすかさず「一石二鳥じゃーん!頭いいー!」と飛び込む僕。
「店長聞いてたんですかー。趣味わるー!いつか捕まりますよー。」なんて笑顔の歓迎ムードで迎えられた僕は「訴えるなよー。」と言いながら「みんなちゃんと考えてくれてるんだ!」と確信したのであった。
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僕が恐れていたのは明日もみんな黙ったまま朝礼が終わるということ。過去にもそういうことは多々あったので…。
というかいつもそうだった。
もちろん明日は何も決まらないまま終わらせないので、そうなると私の意見だけで解決策を出すことに。
自分たちで決めたルールで自発的に取り組むのと他人に決められたルールでやらされるのとではその効果は雲泥の差。
その時の僕の悩みはいつもこれ。
「どうせみんなアルバイトだから、ただ時間ココに来て楽して稼ぎたいだけ。」
なんだと思い始めていた僕には沙世ちゃんと美樹ちゃんの会話は衝撃的であった。と同時に自分の力不足をみんなのせいにしていた自分が恥ずかしくなった。
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そしてその足でアルバイト1人1人のところへ行き、みんなに「どうしたらいいと思う?」と何気なく聞いてみた。
なんと全員がちゃんと答え出してくれたのである。というより、もう既に彼らの中に存在していた答えだった。
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次の日の朝礼。
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昨日私に言ってくれた提案をみんながみんなの前で出し、見事みんなで考えた解決策を取り組みお店のチームワークが出来るきっかけとなっていったのです。
そんなこんなで今では、いつも決まった時間帯になると、僕ないしベテランスタッフが2フロアーある300席の巨大店舗の在庫を確認しにいくのである。
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今日は12月最後の営業なのでいつもより念入りに細かいところまでしっかりとチェックしたいので僕が担当。
「どう?忙しい?」
僕は宴会場のスタッフたちに声を掛けながらドアを開ける。
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「もう、だいぶ落ち着いちゃいましたよ。」
2階の宴会場を取り仕切る後藤主任が心なしか嬉しそうに答える。
「おい!何ニヤニヤしてんだよー!」とかえす僕に、後藤主任は真剣な顔をしようと取り繕いながら「してないですよー!」と押し殺すように答えた。
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本当に忙しい12月だったので今まで気を張っていたみんなの顔がゆるむのも無理もない。
そう思った僕はこの和やかムードを黙認。
「そうかぁ。じゃあ、1人ヘルプもらえる?1階が少しやられてて(仕事に追われてて)。」
僕は現状や今日の営業報告などを簡単に聞きながらラストオーダーから閉店までの仕事を組み立て指示を出しレジへ戻ろうと、
「じゃあ、よろしく!」と声をかけた瞬間。宴会場パントリーの内線が響き一瞬にしてみんなを黙らせた。
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後藤主任が受話器をとるやいなや「店長。池田さんからです。」と僕にかわった。
「何かあったら呼んでくれ」と言ってはいたがこんなことが起こるなんて思いもよらなかった。
僕は慌てて戻るのであった。この焦りをみんなに悟られないようにして。
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店長奮闘記~登場人物紹介~
谷口店長(24歳)
一応この物語の主人公で郷土料理「旬」の新米店長。
猪突猛進で正しいことは正しいと突っ走るところあり。
武田料理長(42歳)
年齢もキャリアも店長よりダブルスコアで上のスーパーシェフ。
いつも店長を大人の目線で支えてくれる男の中の男。
池田キミ子さん(60歳)
店長が最も信頼を寄せ良き相談相手でもあるレジ(フロント)担当。
前職のお寿司屋チェーン店では店長で定年を迎え今はパート。
ケンちゃん(24歳)
店長とは同じ歳の調理スタッフ。お店ではみんなの
ムードメーカーとして調理場とホールの間を取り持つ優しい男。
佐藤くん(21歳)
専門学校を中退してフリーターへ。
とにかく真面目に精神誠意接客する優しい青年だが押しに弱い一面も。
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