店長奮闘記①~今年最後の営業日に~
12月30日(今年最後の営業日)。飲食店にとって12月は一番の繁忙期。
今冬は特に調理場とホールスタッフたち協力しあい、時にはケンカをしながらも一丸となってくれたおかげで売上は毎日最高記録を更新し大入り続出であった。おかげで、冬なのに皆汗だくの疲労が心地良いと思える年の瀬を送っていた。
お店のムードメーカーである調理場のケンちゃんが夜の営業に合わせて入ってくるアルバイトたちに声をかけている。
・
「今日終わったら カラカラ ね!」
・
・
「カラカラ」とはウチのスタッフたちが仕事の疲れを癒すたまり場。
行きつけの店と言えば聞こえはいいが頼むのはいつも「生ビール」と「枝豆」だけ。
マスターもお店が満席になっていない深夜だから嫌な顔ひとつせずに入れてくれるのだろうと「いつもスミマセンね。」と気持ち小さくなって利用させてもらっているのである。
でも、明日からはお正月休み。この日ばかりはみんな時間を気にせずに食べて飲んでの大宴会になるのが毎年の恒例。
もちろん、忘年会費用がお店持ちという部分も大きな要因ではあるが。「きっと今夜も盛り上がるのだろう」と僕もみんなと騒ぐのを楽しみにしている。今年最後の営業もまもなく閉店時間。大入りの忙しさではなかったが最終日としてはいつもの倍くらいの売上。
・
みんな後片付けにだいぶ追われているようではあるがいつもの切羽詰まった様子ではなく、心なしか余裕が感じられる。
「みんなこの冬頑張ったからなぁー。」と僕は心のなかでつぶやき、みんなの成長を一人喜んでいた。
「ドリンクのラスト以上です!お疲れ様でしたー!」と接客係りの佐藤くんがドリンクのラストオーダーを告げる姿を僕はパントリー(ドリンクをつくる場所)で見届け「おつかれさまでしたー!」と返し「じゃあ、棚卸してくるから。なんかあったら呼んでくれ。」と告げてドリンクと消耗品の在庫確認のために倉庫へ向かった。
2分後、私がもっとも信頼を寄せるレジ(フロント)専門の池田さんが「まかない(飲食店スタッフが食べる食事)いただきます!」と声を掛けながらパントリーから厨房横のまかない室へむかう。「このあとカラカラだから残してもいいよー」なんて今日のまかないを作ったケンちゃんが声をかけると料理長も「そうそう。この後まかないより美味しいものが食べれるからね!」なんて普段では絶対に聞こえないやりとりが厨房からも聞こえてくるほど和やかなムードであった。
。
。
。
。
。
。
。
。
この後、僕も池田も佐藤も忘年会に行けなくなる大事件が起ころうとしている事に気が付くこともなく
つづく
¥
¥
¥
¥
¥
¥
店長奮闘記~登場人物紹介~
谷口店長(24歳)
一応この物語の主人公で郷土料理「旬」の新米店長。
猪突猛進で正しいことは正しいと突っ走るところあり。
武田料理長(42歳)
年齢もキャリアも店長よりダブルスコアで上のスーパーシェフ。
いつも店長を大人の目線で支えてくれる男の中の男。
池田キミ子さん(60歳)
店長が最も信頼を寄せ良き相談相手でもあるレジ(フロント)担当。
前職のお寿司屋チェーン店では店長で定年を迎え今はパート。
ケンちゃん(24歳)
店長とは同じ歳の調理スタッフ。お店ではみんなの
ムードメーカーとして調理場とホールの間を取り持つ優しい男。
佐藤くん(21歳)
専門学校を中退してフリーターへ。
とにかく真面目に精神誠意接客する優しい青年だが押しに弱い一面も。
。
。
。
。
。
。















