大衆酒場に学ぶ繁盛哲学 〜第1店 中央酒場(横須賀)〜
第一話
焼き鳥立ち食いからのんびりスタート
これっきり〜〜ですか〜♪ やって来ました横須賀。
この町に来ると、ついつい昭和のヒット歌謡を口ずさんでしまう私。
紛れもなく、昭和30年代生まれですなあ。
某日、横須賀の地元の人に、聞いちゃいましたよ。
そしたら、まあ。
横須賀で少女時代を過ごしたモモエちゃんは、何しろ歌がうまいのが評判で、
目立ちまくりの女子中学生だったのだとか。やっぱりねえ……。
てな感慨はともかく、この町は、知る人ぞ知る大衆酒場のメッカなのだ。
ひょんな縁から横須賀中央駅界隈に足を踏み入れた私は、
その後は、少し時間があると、発作的に京浜急行に乗り込んで、横須賀に行きたくなる。
今回、同行のカメラマンに、そんな話をすると、
「知らねえよ! だって俺、横須賀に来たの30何年ぶりだぞ」だって。
早熟だった彼は、かのエンプラ闘争の時代に、横須賀見物をやらかしていたらしい。
かくいう私も、田舎から東京に出てきた当初に、ドブ板通りを探検に来たもんだ。
「豚と軍艦」という映画も見てたしねえ。
期待通り、ワルそうな米兵がぞろぞろ歩いていて、なかなかの迫力でしたよ。
先日、思い立ってそのドブ板通りに行ってみたら、こざっぱりして、まるで原宿の裏通りのよう。
唖然としました。
もっとも、横須賀中央駅界隈には、良い雰囲気の横丁、路地がたくさん残っている。
残っているというか、昔通りに、当たり前にそこにあるし、みんなが使ってる。
私が好きなのは、例えば焼き鳥の相模屋さんのところの路地だ。
路地の入口に何やら人混みが、と見ると、皆さん、昼間っから焼き鳥の立ち食いに励んでいらっしゃる。
自動焼き鳥機(?)でぐるぐる回るうちに良い加減に焼き上がった焼き鳥を、
勝手にとって、どんどん食べるというスタイル。均一料金だから、
最後にレジに串を持っていき、本数で精算すれば良い。
何とも、ざっかけなやり方で、私のような人間には、それがたいへん心地良いのだ。
夕方6時過ぎ。見る間に満席に
「中央酒場」も駅からすぐの路地にある。入口は少し狭っくるしいが、
暖簾をかきわけて店内に入ると、意外に広々としているのに驚く。
間口は狭いが奥行きがある店。昔の人は「鰻の寝床のような」なんて言い方をしましたね。
まあ、そのイメージよりは間口、広いですが。
入って左手に、幅の広い、まっすぐな木製カウンターが1本、ずどんと横たわっている。
軽く15〜16人は坐れる規模だ。これがまず嬉しい。
私思うに、良い大衆酒場の絶対条件は、一人でふらりと飲みに行けることではないか。
テーブル席ばかりの店だと、一人で席に坐ると、何となく間がもたない。
だから、どうしても、カウンターが必要だ。
で、カウンターに坐ると、同じように一人酒の先客が何人かはいて、
無口に飲んでいる、てな感じがよろしい。
某日、ホッピーとキンミヤ焼酎を看板にした店に、これはと思って入ったら、大外れだった。
カウンターはあったものの、若めの親父と常連らしき若いカップルが、たらたら長話をしていたのだ。
その内容ときたら、サッカーの中田が復帰するだの、ワンボックスカーの車検がどうしただの、
つまらない半可通の話ばっかりで、聞くに堪えない。
試しにピリ辛モツ焼なるものを食ったら、そこらのスーパーで売ってるモツに唐辛子をきかせて
焼いただけなのだろうな、というシロモノだったので、すぐに出てきた。
ホッピーも氷がたっぷり入った、薄〜いホッピーだったしね。
ともあれ酒場の親父たるもの、無愛想なのが良い。
そのくせよく気がつき、正直で一本気なタイプだとなお良い。
スタッフは愛想は良いものの、無駄口をたたかず、せっせと働いていて欲しい。
それでこそ、客のほうはふらりと一人でやってきても、くつろげるというもんだ。
その点、「中央酒場」の雰囲気は素晴らしい。
だいたい、店のスタッフには、無駄口をきいているヒマがないのだ。
われわれ2人がカウンター奥に何とか席を取った後も、
客は増え続け、40人は入れる1階の席は、見る間に満席になってしまった。
たいしたもんだ。
文:ライター桶谷 写真:ソウル久我山
取材協力:中央酒場
横須賀市若松町2−7 電話0468-25-9513 営業10時〜22時半 日曜祭日休み
次回
第二話『戦後すぐに梅割に代わってホッピーが流行』は11月23日更新予定!!


















